- 更新日 2023.11.17
- カテゴリー オウンドメディア
これからオウンドメディアを立ち上げるなら、どんなコンセプトにするか?真剣に考えてみた【インタビュー後編】【2024年最新版】
平成から令和へと時代は移り、SNS全盛の中、オウンドメディアの閉鎖が相次いでいます。オウンドメディアが伸びずに岐路に立たされている運営者の方も多いかと思います。
前編では月間50万PVの個人メディア『サイクルガジェット』を運営し、オウンドメディア『経営ハッカー』を月間400万PVに成長させた実績を持つ中山 順司さんにオウンドメディアの今後の展望をうかがいました。
今回の後編では、中山さんがこれからオウンドメディアを新規で立ち上げるとして、どんなコンセプトで攻めるかをB2C、B2Bに分けてお届けします。令和を生き抜くヒントが詰まっていますので、ご参考ください。
前編を先に読みたい方は「オウンドメディアはオワコン?令和時代の最新オウンドメディア戦略【インタビュー前編】」へ。
B2C例:もしも「転職支援会社としてキャリア系メディア」を始めるとしたら
既存メディアとの差別化ポイント
岩田:これから中山さんに「これからオウンドメディアを立ち上げる場合のコンセプト」を聞いていきます。まずはB2Cの例として「転職支援会社がキャリア系メディアを始めるとしたら」。
中山:転職支援会社は『リクルート』さんや『エン転職』さんなどの人材紹介会社をイメージしてください。オウンドメディアのゴールは「よし!キャリアチェンジしよう!」と思わせることです。すでに競合が多数いる中で注目を得るために僕なら「まだ他人がやっていないけど、価値が高いもの」を探ります。「逆張り+新しいValue」という発想です。
通常のキャリアメディアは、30代前後の若い男女が腕を組むか、会議室でろくろを回すキラキラしたイメージ。ペルソナもそれを見てカッコいいと思い、転職を検討し始める…そこを狙っていると思います。転職を促す定番アプローチだとは思いますが、同じ戦い方で後発が挑んでも勝てる気がしない。
僕ならあえてダサいメディアを狙います。キラキラに対抗するダサダサ。具体的には「おっさんがしゃにむに頑張っている姿を赤裸々に見せることで若者を奮起させる」コンセプトです。登場人物の具体的な年齢ゾーンは…45~49歳以下でしょうか。さしづめメディア名は『U-49』。
49歳って転職を考える最後の、もしくは現実的に転職が可能なラストチャンスなわけで、必然的に必死になりますよね。そんな姿にはリアリティがあります。
岩田:U-49の方々の転職活動を追うメディアですか?
中山:そうです。転職活動を取り上げますが、リアルタイムでなくてもかまわない。無事に転職した方を3ヶ月前からストーリー仕立てで追いかけてもいい。「転職に成功してやりがいも高収入も実現しました(ドヤァ)。」なテンプレ成功体験よりも、U-49の人たちがジタバタしている本気の姿を追いたい。
既存の転職メディアは実際の転職活動の最中についてほとんど語りません。「仕事論とは」「生きることの意味」みたいな抽象的な話も悪くないですが、それよりユーザーさんが知りたいのは「僕が最初にやったことは、社外の人間10人と飲んで自分の強みと弱みをインタビューしました」みたいな人に見せることも語ることもしない心の引き出しに保管しているエピソード。
「ああ、そういうことをやったのか」「一度、自分にダメ出しをしてからポートフォリオを書き直してみようかな」など本当に腹落ちするものにしたい。
「年齢を重ねる」「ダサい」って両方マイナスの要素に思えますが、料理の仕方によってはマイナス×マイナスはプラスに転じることもあるんです。
既存のメディアへの不満、そこじゃないんだよな感
岩田:若い人が読んだとき「自分より一回り年上の人たちも、こんなに頑張っているんだ」と刺激を受けることを狙っているんでしょうか?
中山:はい、転職活動って究極のパーソナルな活動なので、個人のいろんなハックがある。
もし僕と岩田さんが同時に転職活動を始めても、方法はかなり違うはず。転職サイトに登録するかもしれないし、誰かと飲みに行くかもしれない。その結果、転職サイトって使わなくていいじゃん、になるかもしれないけど、それも一つのアンサーです。
今まで飲んでいなかった社内の人間と話をしてみよう、自分が年下の人間からどう見られているか聞いてみよう、自分一人では絶対に考えつかなかった業界にアプローチしてみようなど、考え方のチェンジが起きるかもしれない。新たな気付きを得て「実はこっちの業界が合っているかも」と発見する可能性もある。そういったストーリーが詰まっているメディアです。
岩田:ドキュメンタリー番組みたいですね。
中山:そう。動画コンテンツもアリですね。僕はそんなオウンドメディアをやってみたいし、誰かやってくれないかなと思います。根っこはカッコよくてキラキラしているけど予定調和の域を出ない既成概念に対するアンチテーゼ。既存のメディアへの”そこじゃないんだよな感”を打破したい。
成功者は立派で素晴らしいけど、世の中の大半の人たちはもっと這いずりまわって苦労しています。スマートに颯爽と転職できる人より、できない人のほうが圧倒的多数。そこにスポットライトを当てれば共感を得られる。
キラキラに共感できるのはポテンシャルの高い人だけ。めちゃくちゃダサい人、ダメダメな人間がしゃにむに頑張っている姿は「俺も頑張ってみよう」というマインドにさせることができます。自分の生き方を強制的に見つめ直さざるを得ない強烈な刺激がありますから。我々一般人だって日々もがいている。その個々人の努力を見せてあげたい。
自分と近い境遇のあがき、奮闘に勇気づけられたいという本音
岩田:僕は割と卑屈な性格なので、「どうせ最後はこの人たちって成功するんじゃないの?」って思ってしまうかも(笑)。
中山:成功しなくてもいいんです。転職活動の失敗を書いて反面教師にするものでいい。ハッピーでもバッドでもないリアルなエンディング。引き続きAさんの転職活動は続きます…な終わり方でもOK。
転職活動をするユーザーさんの中には「等身大で自分と近い境遇の人のあがきと奮闘に勇気づけられたい」という本音があるはずですから。大事なことは嘘を書かない。すべてがハッピーエンドだったら気持ち悪いし、人工的です。
岩田:コンバージョンとかマネタイズはどうしますか?
中山:シンプルにアフィリエイトでしょうね。転職サイトへの会員登録とか、最適年収を計算し直しませんか?といったウェブアンケートなど。今のままじゃダメだって思わせる刺激があれば心は動くんじゃないかなと。
岩田:実際に転職活動のときに使った転職サイトを紹介するといいかもしれませんね。「この3社に登録しました」と情報があるとメディアの優劣もない。
B2B例:もしも「マグロ専門卸が飲食店の仕入れ担当者向けメディア」を始めるとしたら
表面的な課題ではなく、『真の課題』の解決に心を砕く
岩田:続いてB2Bのオウンドメディアの具体例をお願いします。「マグロ専門卸が飲食店の仕入れ担当メディアを始める」としたらどうしますか?
中山:レストランや料亭の仕入れ担当者に向けてどんな情報を発信すればベストなのか?を考える必要がありますね。「安い、質が高い、目利きができる、技術と知識が豊富、歴史もあります」という情報はLPで表現できるでしょう。
それに加えて仕入れ担当者が毎回読みに訪れたいと思えるメディア……マグロを仕入れようと思ったとき、まずあの卸業者さんに連絡しようと想起させるメディアにしたい。
まず考えなくてはならないのが、安く仕入れることは担当者の業務の重要な業務のひとつではありますが、そこは本質ではない。彼らの本来の課題は、廃棄量を最小限に押さえて原価率を下げたり、再来訪をしてくれる店のファンを作ったり、美味しい新メニューを考案したり、若手料理人を育成したり、正しい衛生管理をしたり……ということですよね。
であれば、そんな課題解決につながる情報発信をすればいい。マグロ卸の目から見た「お客様が行きたくない店の特徴」という記事、「お客様との会話に使えるマグロのトリビア」があったらどうでしょう?
「ちょっと古くなったマグロを美味しい賄いにするレシピ」、「味も鮮度も落とさず高速に冷凍マグロを解凍するコツ」など、そこに行けば毎日1個、課題が解決するようなオウンドメディアです。◯◯が入荷しました!的なよくあるアピール記事よりもよほど読んでもらえるでしょう。100%利他精神で発想してみることです。
『お客のお客』までイメージする
岩田:中山さんのおっしゃることは他の業界にも当てはまりますね。ホームページ制作の例で言うと、企業側が作っている採用サイトと、学生側がイメージする採用サイトって乖離があるんです。
この前、インターンの学生が「採用面接では必ず志望動機を聞いてくるけど、採用サイトに会社の具体的な業務が載っていない。具体的な業務が分からないので、志望動機を準備しようと思っても難しい」と話していたのが印象的でした。
ネームバリューのある会社は業務範囲が広いことと、「もう知っているでしょ」と思っているのか…そのせいで、志望動機が作りづらいという学生の声です。
中山:まさにそこなんです。
マグロ卸の話に戻ると、レストランの仕入れ担当者のお客、つまりレストランに食べに来るお客のことを考えてメディアを作る。マグロの圧倒的プロだから、マグロの365日レシピを教えてあげることもできるはず。
「この季節ならマグロじゃなくてハマチだよ」みたいな、自分の利益にならなくても、お店や店に来るお客の役に立つ情報を届ける。youの成功がmeの成功だよという考えでメディアを作ります。一言で表すと「お客のお客までイメージして考える」です。
岩田:エンドクライアントを超えてカスタマーまで考えた上でオウンドメディアを作る、と。そう考えると卸って常連さん同士の世界と思いきや、まだまだ入門者にも可能性はありますね。
中山:美味い不味いとは別次元で料理を語り、自社の繁栄よりも業界全体の持続的発展を考えることで、新しくてなおかつこれまで存在しなかった価値観を提供できます。そこまで役に立つメディアであれば、「卸と言えば〇〇」と、自社に想起させることは可能じゃないでしょうか。
コンテンツを発信する側が持つべきマインドセット
岩田:ありがとうございました。最後はコンテンツを発信する側が持つべきマインドセットのおさらいに入りたいと思います。B2Cの例では、「まだ他人がやっていないけど価値が高いものを探す」でした。
中山:ですね。ただし茶番はNGです。着飾っていないこと。建前だけじゃなくその人の素が見えるもの。
余談ですが、私がfreeeに転職しようと思った究極コンテンツは他メディアに掲載されている社員インタビューでした。社員が顔も名前も出してカッコ悪い面も含めた素顔をあけすけにさらけ出していた。それを読んで「強みも弱みも見せられる人なんだ」と分かったから会いに行ってみようと思いました。
採用サイトに書いてあることは所詮テンプレだし、会社に言わされていると思っちゃうので茶番になっちゃう。母屋でいくら頑張ったって演技になってしまう。
岩田:なるほど。そしてB2Bでは、「真の課題を解決する」「お客のお客の課題を考える」ことですね。そうしないと本当に良いコンテンツを作れない。
中山:お客のお客の行動から逆算してコンテンツを企画することです。そこを考えてくれる企業なら頼ってしまう、ファンにならざるを得ない。
バズコンテンツ、面白コンテンツを作るのも良いですよ。freeeで、確定申告パニック『TAX SHARK(タックス・シャーク)』という動画を作って色んなイベントで流していました。これが意外と採用につながったんです。
「この会社おもしろい」って。この動画に関しては、演者は一般人、撮影は船橋、撮影日数は1日の1発撮りです。オウンドメディアはオワコンと言われていますが、まだまだ限界は超えられますよ。
令和時代の最新オウンドメディア戦略 まとめ
後編では中山さんが考える新しいオウンドメディアのコンセプトを紹介してきました。ポイントは、まだ他人がやっていないが価値が高いものを探す。
B2Bの新しいオウンドメディアの3つのコンセプト
- 既存メディアとの差別化のポイントは逆張り+新しいValue
- 既存メディアへの「そこじゃないんだよな感」をなくして共感を得る
- 年齢を重ねる・ダサいと言うマイナス×マイナスでプラスに転じる
B2Cの新しいオウンドメディアの3つのコンセプト
- 100%利他精神で発想してみる
- 表面的な課題ではなく、真の課題の解決に心を砕く
- 『お客のお客』までイメージする
中山さんの言葉の中には、これからも発展しうるオウンドメディアの可能性とヒントが凝縮されていました。オウンドメディアがオワコンと言われている中で、他責で匙を投げるか、自走して追い風とするかは考え方ひとつです。前編・後編の記事を参考に、これからもオウンドメディアの可能性を広げて続けていきましょう。
Q. オウンドメディアとは何ですか?
企業が運営している「ブログ」のようなものです。サイト(ブログ)内で記事を作成し、売上の増加に繋げます。
Q. オウンドメディアの戦略には何がある?
オウンドメディアの戦略として「既存メディアとの逆張りを図る」「お客様の課題解決に全力を注ぐ」等が挙げられます。詳しくは記事をご覧ください。
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この記事を書いた人
松田 光正
専門分野: SEO,ライティング
スポーツ新聞社での校正・校閲を2年経験し、髪の毛の情報サイト「ヘアラボ(旧ハゲラボ)」にて2年半のライター経験を積む。自身がアナログ人間のため、Webの知識を学びつつ、圧倒的な初心者目線のコンテンツをお届けします!
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