- 更新日 2022.05.12
- カテゴリー ホームページ制作の見積もり・発注
ホームページ制作の業務委託契約書チェックの6つのポイント
ホームページ制作会社から提示された業務委託契約書のチェック方法、解説します。
ホームページ制作の発注先も決まり、いざ契約!
これからプロジェクトの開始に向けて準備している時に制作会社から1通のメールが。
制作会社
弊社、業務委託契約の雛形ですのでご確認の程、宜しくお願い致します。
普段から、ホームページ制作の契約に慣れている制作会社とは違い、発注側は契約書のポイントや修正依頼の方法など分からないと思います。
本記事では、業務委託契約の「チェックすべきポイント」を解説していきます。
・議論になりやすい契約のポイント
・ホームページ制作を行う際に実際に定めておいた方が良いポイント
・契約書の文言を変更したい時の交渉術
なども交えながらご説明しておければと思います。
ホームページ制作で起こりがちなトラブルも合わせてチェック!
ホームページ制作を業者に依頼する過程で起きがちなトラブルをまとめました。
対策方法もご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
ホームページ制作のよくあるトラブルとその対策【事例別に紹介】
業務委託契約書をチェックする必要性
今回は、制作会社から業務委託契約書の雛形をもらった場合を想定しています。
その場合、基本的には制作会社側に有利になるような内容であることが多いです。
(制作会社はできるだけリスクを取りたくないため)
良い加減にチェックすると、不平等な内容で下記のようなリスクを招いている可能性があります。
しっかり確認しましょう。
思わぬ作業で追加費用が発生するリスク
契約書でしっかり「作業範囲」を定義しておかないと、
・ホームページの完成後、サイトの公開をお願いしたら別料金を請求された
・コンテンツ(HPの原稿や写真)は別料金と言われた
など、想定していないところで追加料金を請求される可能性があります。
知らない間に納品が完了してしまうリスク
ホームページ制作会社からの確認依頼のメールが来たが忙しく、3日ほど返信できなかった。
4日目に改めて返信したら
「確認期間を過ぎているため修正できません。」と連絡が来た。。。
納品の定義をしっかり定めていないと、しらいない間に納品完了となっていて、修正がきかない可能性もあります。
ホームページ公開後の不具合修正をしてもらえないリスク
ホームページの公開後、不具合を発見。
制作会社の作業ミスのため不具合を修正を依頼したら、「対応できない」と言われてしまった。
聞けば公開後2ヶ月間しか不具合修正は対応していないとのこと。。。
公開後の修正対応期間を限定的に定められている場合もあります。
このような一見「理不尽じゃない?」というような事も契約書の内容によっては、正当化されてしまっている事もあります。上記のようなリスクを回避するために契約書チェックは不可欠です。
業務委託契約書でチェックするべきポイント
それではホームページ制作の業務委託契約書でチェックするべきポイントを項目ごとに見ていきましょう。契約書は長々と文章が続きますが、見落とすと思わぬ失敗につながる可能性があるので、次の6つは重点的にチェックしてください。
- 作業範囲は適切か
- 再委託の内容は適切か
- 検修方法や期間は問題ないか
- 瑕疵担保責任の期間は問題ないか
- 著作権は問題ないか
- 損害賠償は問題ないか
作業範囲の定義
作業範囲とは、制作会社に「ホームページ制作に当たってどのような作業を依頼するか」を定義したものです。
例えば「ホームページを構成するデザイン、画像データ、ソースコード等を制作する。」と記載されていた場合、下記の作業は制作会社の作業範囲「外」となります。
- レンタルサーバーやドメインの契約
- ホームページ完成後の公開
ホームページ制作の公開の手配をお願いしたが、「契約に含まれておりませんので」と言われてしまっても、何も反論できません。
基本契約と個別契約に分けて契約を結んでいる場合、各案件の作業範囲は個別契約にて締結することが多いです。確認する場合は個別契約を見るようにしましょう。
再委託
再委託とは、クライアントから委託を受けた制作会社から、さらに別の制作会社やフリーランスに作業を委託することです。
この再委託を自由に認めてしまうと、下記のようなトラブルが起こりえます。
- デザインが良いからA社にお願いしたのに、知らない間にB社がデザインを担当していた。
- 機密情報が含まれているのに、外部の別会社が自由にアクセスできるようになっていた。
小規模な制作会社の場合、制作会社同士で組んで制作チームを作る場合もあるので、再委託そのものが悪いわけではありません。
再委託を認める場合は
- 「委託者の書面による承諾を得た場合に限り」と条件をつける
- 第三者に業務の全部または一部を委託する場合、当該再委託先の行為について一切の責任を負うものとする。
というように再委託先の管理責任を制作会社に追わせておくべきです。
検収
検収とは「納品物をチェックして、OKを出す」ことです。
ここでチェックするべきは検収の「方法」です。
制作会社からの契約書には「制作会社からの確認依頼通知の送信後◯日以内に制作会社宛への連絡が無い場合は、制作物の内容が承認されたものとする。」
などの記載が多いかと思います(いつまでも「検収中です」とクライアントに言われると厳しいので)。この「◯日以内」がチェックポイントです。
筆者が実際にネット検索で制作会社の契約書の雛形などを見ている時に、「2日以内に」という記載を見つけたことがあります。
多忙な方は2日で納品物を全てチェックするのは難しいかと思います。
合理的な日数になっているか、しっかりチェックしましょう。
瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、納品後に未発見のバグ(不具合)が見つかった場合に、制作会社側が「補修や弁償をします」というもの。
※瑕疵担保責任についての解説はこちらから
瑕疵担保責任とは
民法上では、瑕疵担保責任は1年以内とされていますが、制作会社の契約によっては3ヶ月以内や半年以内と定められていることがあります。
5ページ程度の小規模なホームページであれば、それで問題ないのですが、
ECサイトや複雑な機能を持ったオウンドメディアなど、システム的な要素が含まれるホームページについては、できるだけ長めに期間を定めておいた方が安心です。
(逆に1年以上に設定することも可能ですが、制作会社が嫌がります。妥協点を見つけることが大事です。)
「難しくて良く分からない」という場合は、「瑕疵担保責任の期間」だけ注意してチェックするようにしてください。
※単純に「バグ発見!=瑕疵」とすることはできないと考えられています。
瑕疵担保責任に関しては非常に専門的な内容になるので下記を参考にしてください。
システム開発における瑕疵担保責任
※不安な場合は弁護士に相談することをお勧めします。
著作権
ホームページの著作権は、発注側に帰属するようになっているかチェックしましょう。
制作会社よっては
- 制作実績として制作会社のパンフレット等で利用する分には公開してOK
- 個別のプログラムやソースコードに関しては、他案件に使いまわしてOK
という制限を設けている会社もあります。
制作会社の実績として使って欲しくない・外部に情報を出したくない等の場合は実務に即して、適宜制作会社と協議することが必要です。
損害賠償
損害賠償に関する条項は、ほとんどの契約書についていると思いますが
- 損害賠償請求額が「制作料金を上限」と制限されている
- 「損害」の定義が制限されている(逸失利益や間接損害が含まれないなど)
損害の定義の部分は、かなり専門性が高くなってしまいますので割愛しますが、損害賠償請求額については
「損害賠償額については、○条で定めた制作料金を累積限度額とする。」
などの記載があるため注意してチェックしてください。
業務委託契約書の条項を修正したい時のポイント
ここまで契約書チェックで注意するべきポイントを上げてきました。
実際に「このままで契約締結するのは難しい」という内容を見つけた場合、制作会社に文言の修正依頼を行わなければなりません。
しかし、制作会社も簡単に文言の修正を行いたくないため(制作会社が不利になるため)、「交渉」が発生します。
その交渉の際、妥協を見つけて少しでも交渉が上手くいくようにテクニックをいくつかご紹介したいと思います。
効果を変更する
もっとも分かりやすい修正案です。
・元の文言
「乙(制作会社)は、本作業の全部又は一部について、第三者に再委託できるものとする。」
・この文言を
「乙(制作会社)は、本作業の全部又は一部について、第三者に再委託できないものとする。」
と変更してしまうことです。
分かりやすいですが、上記のようにかなり意味が変わってしまう場合があります。
そのため、こちら側の交渉力が強い場合や、絶対に譲れない部分などに対して行います。
要件を変更する
- 「〇〇(発注側)による事前の承諾がない限り」
- 「△△が書面で通知を行なった場合は」
など、条項に対して「制限」をつける方法です。
例えば
・元の文言
「乙(制作会社)は、本作業の全部又は一部について、第三者に再委託できるものとする。」
・この文言を
「乙(制作会社)は、本作業の全部又は一部について、第三者に再委託できないものとする。」
としてしまうと、外部のフリーランスに協力を仰ごうとしていた制作会社は困ってしまいます。
外部に再委託するのは問題ないが、誰にでも自由に再委託されると困る。という場合は
・さらに修正案として
「乙(制作会社)は、本作業の全部又は一部について、甲(発注側)による承諾を得た場合に限り、第三者に再委託できるものとする。」
と妥協点を作ってしまうというのが要件を変更する方法です。
例外を作る
文字通り例外を作る方法です。例えば
・元の文言
「(発注側が請求できる)損害賠償額については第○条で定める制作料金を限度額とする。」
この文言を「程度がひどい(故意・重過失)場合」は上限額を定めないようにしたい場合
・修正案として
「損害賠償額については第○条で定める制作料金を限度額とする。ただし故意または重過失の場合はこの限りではない。」
という形で例外の形を作ります。制作会社側に「故意によるものなら仕方ない。」と譲歩してもらうためです。
業務委託契約書のよくある形態2パターン
「ホームページ制作」だけに限らず、業務委託契約を行う際にあるあるな形態が2つあります。
制作会社によって違うので、違いを理解しておきましょう。
基本契約+個別契約のパターン
事業者間が取引を行う上で必要な約束事を「基本契約」にて定めてしまい、都度決まる細かな案件の内容は「個別契約」で定めるという2つの契約書を締結するパターンです。
一回基本契約を締結してしまえば、今後同じ制作会社に発注する場合、簡単な個別契約のみで済むのでカンタンというのがメリットです。
継続発注・追加発注する可能性がある場合はこちらの方が良いかと思います。
ちなみに筆者がホームページ制作を行なっていた時は、個別契約はプロジェクトの金額・納期・作業範囲などが中心になるため、「発注書」を個別契約がわりにしていました。
案件ごとに契約書を作成するパターン
契約書は1つのみ。案件ごとに都度すべての条件を決めて契約書を作成するパターンです。
初回の取引から1つの書類で済むのでシンプルなのがメリットですが、毎度作成しないといけないのがデメリットです。
業務委託契約書のサンプルご紹介
「ホームページ制作 契約書」と検索しても、制作会社(サービス提供側)向けに書かれたサンプルや雛形が多く出て来ます。
以下、発注側の観点で書かれた契約書サンプルをご紹介します。
ホームページ制作会社向けに特化している契約内容でありませんが、発注側に寄り添った内容になっています。
本記事にて紹介したポイントは網羅されている契約書サンプルです。
ただし基本契約書になっているので、個別契約書により別途条件を定める必要があります。
※ただし、あくまでサンプルです。実務やその時の状況に鑑みて内容を修正するべきです。
そっくりそのまま利用することにもリスクがあることご了承ください。
※本契約書サンプルの紹介に関しては、プロコミットパートナーズ法律事務所の代表弁護士長尾様より許可いただいております。長尾様ありがとうございます。
ホームページの契約書まとめ
本記事では制作会社より提示される契約書のリーガルチェックのポイントをお伝えしました。
本来、契約書は「何かあった時のための」約束事。
できるなら、契約書にはお世話にならず両者納得できる良いプロジェクトにするのがベストです。
そのためには、「良質な制作会社」に「良質な発注(提案依頼)をする」ことが重要です。
・良質な制作会社の探し方はこちらをご覧ください
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・良質な提案依頼の方法はこちらをご覧ください
見積もりが安くなる!?絶対に行うべきホームページ制作発注の事前準備9点セット
法律の問題は非常に専門性の高い内容です。
可能であれば弁護士の方にご相談することをオススメします。
関連記事:ホームページのリース契約に要注意!騙される前に知っておくべき危険性
※本記事は2018年8月時点に執筆しており、その時点の情報に基づいております。
現在の内容と異なる場合がございますので、ご注意ください。
※2020年には民法改正が行われます。
瑕疵担保責任の名称が変更になったり、ホームページ制作の契約にも影響があります。ご注意ください。
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この記事を書いた人

岩田 真
専門分野: ホームページ制作,ディレクション,Webマーケティング
株式会社ユーティル代表取締役。2015年にWeb制作会社として株式会社ユーティルを設立。Webディレクター・営業担当として、3年で上場企業を含む50社以上のホームページ制作に従事。経験・スキルがゼロの状態からホームページ制作事業を始めたので初心者の方に分かりやすく、業界の知識をお伝えできます!
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